メウチ デビッド・ハワードモデルのひとつ
おいらが後藤さんとの濃密な空間を味わえるようになったのは、大学を卒業して無事に(?)就職してスポーツランドの常連に仲間入りしてからだった。
話したいことはいっぱいなんだけど、中でも記憶に残っているひとつが、パーフェクト宣言してからのボウラード。
多くの常連が見守る中での宣言・・・。
後藤さんの腕前には誰もが疑いようがないけれど、自信満々に「今からパーフェクトを見せてやる」って言われると、なぜかこっちが緊張したものだ。
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当時の常連仲間に、今や台湾ビリヤード界の重鎮でもある楊さんがいた。
後藤さんは「ヨウくん」、おいらたちは「ヨウさん」って呼んでいた。
たしかキューはメウチのデビッド・ハワードモデルを使っていて、球撞きに対する情熱は相当なものだったように記憶している。
台湾ビリヤード界の大物になった楊さん 出典:ビリヤードマガジン
ある日、練習を終えた楊さんと後藤さんが会話をしていた。
話の内容までは覚えていないが、どうやら楊さんが、
「ボウラードのパーフェクトを見たことがない」
という意味のことを言った。
それに対して後藤さんが、
「見たことないの? よし、じゃあ見せてやる」
って応じた。
「またまたあ…」
なんて言いながら半信半疑で笑顔を浮かべていた楊さんだけど、真顔になるのにそれほど時間はかからなかった。
おいらたちは後藤さんのパーフェクト宣言に、固唾を呑んで見守っていた。
いつもの調子で淡々と、確実にポケットしていく後藤さん。
手球はラシャの上をクルクル、クルクル…。
ダンスでもしているような華麗な動き。
アッという間に最終ラックを取り切って、いとも簡単に宣言どおりのパーフェクト300点。
おちゃめにガッツポーズを見せる後藤さんに、呆れたような表情の楊さんの顔が紅潮していたっけ。
見物していた常連たちだって言葉もなかった。
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おいらは一回だけ後藤さんと14-1をやったことがある。
ある日曜日の午後、珍しく早い時間にスポランにやって来た後藤さんが、
「ナベ、14-1やろう」
って誘ってきたんだよね。
たぶん、TPAで14-1の試合が組まれていたんだろうね。
「お願いします」
って軽く受けたおいら。
でもこれが、約1時間半の場代を捨てることになろうとは…。
だって、おいらの出番っていったら最初のワンショットだけなんだもん。
おいらの下手なセイフティで幕を開けたゲームは、それっきり後藤さんの一人舞台。
っていうか、おいらなんていなくても同じ、後藤さんの一人練習って感じ。
でも、後藤さんの腕前をあらためて認識する貴重な体験だった。
何ラック続けたか数えるのも飽きるくらい、後藤さんの一人プレイは延々と続く。
異常なまでのキュー切れで、手球が的球の塊をグリグリと押し開く様子は、なんだか手球が獰猛な野獣にでもなったみたい。
場代のことを思い出したおいらが、
「後藤さん、もう時間が…」
って声をかけるまで、後藤さんは夢中になって撞いていた。
後藤さん、さすがに悪いと思ったのか、あとでモスバーガーのチリドッグをおごってくれたっけ。
あ、歌舞伎町まで買いに行かされたのもおいらだけどね。
つづく・・・
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