おいらがまだ新宿スポーツランド本館でアルバイトをしていたころの話です。
中番の仕事が終わって、いつものように遅番の時間帯に球の練習をしていました。
すると、見たことのない壮年の白髪男性がレジカウンターの横に座って、おいらの練習を見ていたんです。
スポランを経営する「三平」の社員にしては雰囲気が違うし、見た目は60代だし、もしかしてアルバイト?
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そんなことを考えながら球を撞き続けていると、そのじい様が、
「よかったら、一緒に撞きませんか?」
なんて声をかけてくるではありませんか・・・。
おいらの表情が一瞬混乱していたんでしょう。
「大丈夫ですよ、球の心得はありますから」
なんて言われちゃいました。
で、じい様とナインボールをすることになったんですが、ちょっと高いフォームやストロークの仕草から、キャロムの経験者かなって想像したんです。
そしたら、案の定、
「昔はね、スリークッションのプロなんかやってたんですよ」
って・・・。
なるほどって思いながらも、おいらは「プロ」って言葉に身構えました。
で、このじい様、球はよく入れるんです。
でも、ネクストがちょっと変わっていて・・・
ネクストのボールに、必ず手球を当てるんですよ!
クッションを器用に使って・・・。
本人は、
「ついつい無意識に当てちゃうんですよねぇ~」
なんて言ってんですが、その精度がハンパないんです。
当時のおいらはシステムなんてほとんど知らなかったから、
「どうやって測るんですか?」
って聞きました。
そしたら、じい様、
「星を数えるんですよ」
って・・・。
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なんとも意味不明な、それでいて奥が深そうな言葉。
そのときのおいらは、
「こ、これは深く聞くと面倒くさいパターンだ・・・!」
って判断し、それ以上は聞きませんでした(笑)
じい様は、その後もネクストでは当て続けます。
でもネクストボールに当てるわけだから、残しは渋くなったりもします。
で、外したりするんですが、それでも手球は次のボールに当たります。
じい様が撞くたびに、テーブル上の球の配置が少しずつ変わります。
おいらが撞いていると、
「ああ、そういうふうに出せばいいんですねぇ~、わかってんだけどなぁ~」
なんて、いちいちうるさいじい様。
なんだかイライラしてきたおいらは、
「ちょっとメシ食ってくるんで・・・」
と言って強制終了。
今思えば、クッションを学ぶいい機会だったように感じて、もったいなくもあるんですが、まぁ、若気の至りというか、我慢ができなかったんですね。
腹も減ってたし・・・。
・・・星を数えるんですよ・・・
いまだに脳裏に謎めいて響き渡る、じい様の言葉なのでした・・・。
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